任意団体の法人化にむけて|法人格の選択、法人化のメリット・デメリット

任意団体の法人化について

法人化のメリット

権利関係の明確化、トラブルの予防、円滑な活動の促進、そして社会的信用度の獲得という部分が異なります。

任意団体
  • 権利の主体になれない(登記や銀行口座が団体名でできない)
  • 代表者の負担増(基本的には契約の面でもお金の面でも代表者の名前で行うことになる)
  • 権利の引継ぎが大変(死亡時の手続やクラブと対立したときにややこしくなる)

法人格
  • 権利の主体になれる(登記や銀行口座を団体名でできる)
  • 代表者の負担減(団体名の契約が可能なので、リスクの分散等につながる)
  • 権利の引継ぎが簡単(所有物や契約主体が団体なので、異動や退職があっても影響が少ない)

権利関係の明確化、トラブルの予防、円滑な活動の促進、そして社会的信用度の獲得という部分が異なります。

法人格の選択

公益性(不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すること)を重視するならば、一般社団法人よりもNPO法人という法人格を選択すべきであると考えます。

設立時の行政庁の認証が必要であること、継続して行政庁の監督を受けること等で公益性が担保されるからです。

一般社団法人も公益認定等委員会の公益認定を受けることにより、公益の増進のために活動していく法人である公益社団法人になれますが、公益認定の基準は依然として高いものとなっています。

非営利型一般社団法人 NPO法人
  • 事業に制限がほとんどない
  • 登記をすれば設立することができるので、短期間で設立可能
  • 業務運営について行政庁の監督を受けない
  • 非営利型一般社団法人の場合、収益事業に関しては課税
  • 利益を構成員に分配できない
  • 事業に制限がある(不特定多数の者の利益のために活動を行う必要がある)
  • 行政庁の認証が必要なので設立に5~6か月かかる
  • 業務運営について行政庁の監督を受ける
  • 原則非課税で、収益事業に関しては課税
  • 利益を社員や役員に分配できない
  • 行政庁への報告義務がある

選択のポイント

共通点

  • 「非営利」
    「非営利」とは、利益を出してはいけないという意味ではなく、利益を特定の個人・法人・団体に配分するのではなく、非営利活動に充てなさいという意味)

相違点

法人化を考えるうえでは、自分たちの活動が公益なのか、また、共益的活動はどの程度あるのかを把握することが必要

  • NPO法人
非営利型一般社団法人
  • 特定非営利活動促進法で事業目的が「不特定かつ多数のものの利益(=公益)の増進に寄与することを目的とする」と定められている
  • 社会課題の解決や社会的使命の達成などの公益がNPO法人の事業目的となる
  • 事業目的は「公益」でも「共益」でも設立が可能
    たとえば、「落語協会」や「日本野菜ソムリエ協会」など、構成員共通の利益(=共益)を事業目的とすることも可能
  1. 目的で判定
    NPO法人の場合、20分野の特定非営利活動が主な目的となっている必要があります。
    一般社団法人の場合、活動内容に特に制限はありません。
    主な目的が20種類の特定非営利活動に当てはまるかどうかが一つのポイントになります。
  2. 社員や役員の人数で考える
    NPO法人の場合、社員10名以上、役員3名以上、監事1名以上が必要となります。(役員・監事と社員は兼ねることができます)
    この場合の社員とは従業員のことではなく、正会員と呼ばれるもので、NPO活動の趣旨に賛同して、議決権を行使することでNPO法人の運営に参画する人のことを指します。
    一方、非営利型一般社団法人は社員2名、理事3名から設立が可能です。
    また、どちらも役員の親族規定があります。
  3. 社員資格の得喪で考える
    社員資格の得喪(社員になれる者の条件)に関して、NPO法人と一般社団法人とでは大きな違いがあります。
    NPO法人の目的は公益であるため、この社員の資格に合理的な理由がない限り、不当な条件を設けてなりません。
    NPO法人では原則として合理的な理由がない限り、その申出(社員になる)を断ることができません。
    一般社団法人の目的は公益を目的としなくてよい(ただし共益を含む)ため、定款で定めることにより条件を設けることができます。
    共益が含まれることを前提とすれば同じ資格や同じ条件の者だけが社員となることも可能です。
  4. 設立までの期間で考える
    NPO法人の場合、約5~6か月かかります。書類作成も煩雑です。
    一般社団法人の場合、2~3週間程度です。書類作成もNPO法人に比べれば煩雑ではありません。
    早く法人を設立し、事業を開始したい場合には一般社団法人の方が適しているといえます。
  5. 設立費用で考える
    NPO法人の場合、法定費用は不要です。一般社団法人の場合、法定費用として定款認証手数料52,000円、登記時の印紙代60,000円、合計112,000円必要です。

 NPO法人と一般社団法人の違い

NPO法人 NPO法人はNPO法にある福祉や環境など20分野の活動を通して「公益の増進に寄与する」ための組織であり、事業目的は公益です。そのため活動についても、収益目的の事業には制約があり、運営においては市民の参加が前提です。

たとえば、「社員総会」で議決権を持つ会員に新規の申し込みがあったとします。最高意思決定機関である総会で議決権を持つということは、運営に参加するということです。NPO法人の場合、この申込みを正当な理由なく断ることができず、基本的には受け入れることになります。また、ボランティアや寄附を受け入れながら運営することも多く「市民の参加のもと、開かれた運営で社会に向けた活動をする」のがNPO法人といえます。

一般社団法人 一般社団法人は事業目的が公益と共益のどちらでも設立が可能で、活動分野や内容には制限がありません。また、市民参加型を前提としておらず、議決権を持つ人に条件や制限を付けることができ、たとえば「仲間と運営する」「地元住民だけで活動する」ことも可能です。そのため、共益活動を主目的とする同窓会や、同業者で運営したい専門職団体などではこちらを選択することがあります。

さらに一般社団法人には、最も一般的な非営利型以外のタイプのほかに、非営利型として非営利徹底型と共益型の2つがあります。非営利型になるためには要件がありますが、税制上の取扱いが非営利型以外の一般社団法人に比べて若干優遇されます。

手続きの違い

NPO法人 NPO法人は「認証」という方法で設立し、登記の費用は掛かりません。具体的には、定款を含む11種類の申請書類を所轄庁に提出後、4カ月以内に認証か不認証かの通知があり、認証されれば登記をして法人が成立します。設立総会も必要のため、仲間とともに立ち上げを進めることになります。あくまで「市民が行う自由な社会貢献活動」をする法人格なので、定款などを見て所轄庁が「この活動は良い・悪い」というように活動の価値判断をするわけではありません。しかし、申請内容が法令に反していないことが必要です。
一般社団法人 一般社団法人は「準則」という方法で設立します。具体的には、団体のルールブックである定款の作成、公証人の認証、登記といった3つの段階を経て成立します。

費用の違い

NPO法人 一般社団法人
所轄庁 都道府県・政令市 なし
設立方法 認証 準則
設立期間 5~6か月 2~3週間
法定費用 0円 112,000円
情報公開 あり 特にはなし
行政庁の監督 緩やかにあり ほぼなし

申請の流れの違い

NPO法人 一般社団法人
  1. 設立総会
  2. 書類作成
  3. 認証申請(所轄庁)
  4. 縦覧期間(2か月)
  5. 認証通知
  6. 登記(法務局)
  7. 登記完了届(所轄庁)
  1. 定款作成
  2. 定款認証(公証役場)
  3. 登記申請(法務局)

設立後の比較

設立後は法令や定款に則った適切な運営が求められます。NPO法人は、毎年、貸借対照表の公告や所轄庁への報告書類提出などのほか情報公開の義務があります。

また、所轄庁の緩やかな監督も受けます。

一般社団法人には所轄庁がなく、情報公開の義務も関係者への閲覧程度で、ほぼありません。

すなわちNPO法人は設立後に多くの事務が発生しますが、それにより公益性を担保し、かつ市民に開かれた運営を実現できます。

なお、両法人とも税務や労務と無関係ではなく適切な対応が必要です。

認定NPO法人と公益社団法人

NPO法人は、設立後2事業年度を終了して、受入寄附や組織運営などの条件を満たすと「認定NPO法人」の申請ができるようになります。

認定NPO法人制度は、幅広い市民から支持・支援を受けているNPO法人を認定し、税制優遇を与えることで、その活動を支援するというものです。

2001年にスタートした制度ですが、申請作業の大変さや要件の厳しさなどから、認定数はNPO法人全体の1%以下にとどまっていました。

しかし、2012年にNPO法が改正され、認定制度にも大きな変更がありました。これにより「認定」が身近になり、目指す団体も増えています。

また、一般社団法人も公益認定を受けることで「公益社団法人」になることができ、さまざまな税制優遇が受けられるようになりますが、これには行政による監督や組織構成などへの制限も生じます。

法人格を検討するときは、「その先」を視野に入れた組織づくりをすることも方法のひとつです。

運営面から考える

NPO法人や一般社団法人となることで「非営利性」をアピールすることができます。

NPO法人はそれに「公益性」が加わり、社会に運営や会計の情報を公開することで「透明性」を保ちやすくなります。

また、所轄庁により情報公開がされることで市民に知ってもらう機会が増えることも予想され、結果として信頼につながることもあります。

一般社団法人は、運営や会計の情報公開義務がないため自主的な努力が必要になります。

また、NPO法人は「市民性」が高く、開かれた組織で運営されます。対等な関係の参加を促すことで、特定のメンバーによる運営ではないことを強調できるため、住民主体の民主的な運営を目指す場合には選択しやすい法人格と言えます。

一方で、意思決定のスピードについては、NPO法人の場合(定款によりますが)、「みんなで決める」ことを重視しています。スピードを重視するならば、任意団体や一般社団法人の方がスムーズとも言えます。

財政面から考える

NPO法人、一般社団法人のどちらも、法人化により財産は代表個人の手元から離れますので、管理や引き継ぎがしやすくなります。

また、「助成金を得るため」法人化を検討されるケースも多いようです。助成金は、公益法人や企業関係、市民団体など、多様な助成団体により年間を通して提供されています。

任意団体や一般社団法人は、外から見て活動の公益性が判断しにくいため、対象外としている助成金も若干はありますが、多くの場合、助成金対象条件に「法人であること」は含まれていません。

むしろ活動実績やその非営利性・公益性が重視されています。

また、法人化することで市民や企業からの寄付を増やしたいとお考えの方もおられると思いますが、あくまで寄付は団体や活動に対する共感や賛同を基に集まるお金です。

組織のカタチや法人格の種類ではなく、活動や参加の仕組みを工夫することが大切です。

寄付を意識した法人のカタチに認定NPO法人があります。NPO法人設立時から「認定」を目指して組織づくりをする団体もあります。

事業面から考える

指定管理や事業委託など、行政との契約・取引を増やしたいといった、事業の契約先との関係から法人化を検討することもあります。

なかには、契約できる法人格を限定し、一般社団法人は除外している自治体もあります。

行政との契約においては、NPO法人も注意が必要です。

行政関連の事業では、活動の対象者を「○○の条件を満たす人」や「運営にかかわるメンバーは○○町民のみ」などと限定している場合があります。

事業に一定の制約があるNPO法人は「社員」希望者を不当な条件で断ることができません。最初は住民ののみで構成されていても、将来的に○○町民でない「社員」の方が多くなる可能性もあるので、そういった注意も必要です。

また、法人化することで福祉事業やコミュニティビジネスなど活動の幅を広げたいといった場合は、一般社団法人は制約を受けずに多様な活動をすることができるので適しているといえます。

組織のビジョンやみなさんの夢を実現するためのツールとして法人化を検討する

法人化することにより、さらなる地域貢献や市民との協働が期待できます。

一方で、法人化に伴う実務に追われ活動に手が回らないという話もよく耳にします。従来のやり方を大幅に変えることは団体の負担にもなります。

「何のための法人化か」を団体内でよく話し合い、できる限り現在の体制や方法に沿ったものを選択することをお勧めいたします。

特にNPO法人を選択した場合は、地域スポーツクラブであると同時に、市民活動団体としての側面も持つことになります。意識的に参加の仕組みをつくり、幅広い市民とともに活動していくための取り組みが必要になります。

1. 任意団体とは?

任意団体とは、法人格を取得していない団体のことをいいます。

法人格のない人の集まりのため、法律上はあくまでも個人の集まりとして扱われることになります。

任意団体は、利益分配のやり方によって「営利組織」と「非営利組織」、団体の構成員の特性によって「組合」と「権利能力なき社団」に分けることができます。

営利組織と非営利組織

「営利組織」 事業活動により得られた利益を、社員や株主など組織の構成員に分配します。
「非営利組織」 利益をあげてはいけないという意味ではなく、利益をえても構成員に分配せず、組織の活動目的を達成するための費用にあてることを指します。

組合と権利能力なき社団

「組合」 団体の構成員の特性が運営に強く反映される団体
「権利能力なき社団」 構成員の特性が運営に強く反映されない組織化された団体

2. NPOとは?

「NPO」は、「Non Profit Organization」の略語で、直訳すると「非営利組織」となります。

営利を目的とせず、社会的な使命(ミッション)を達成するために自主的に活動している民間の組織となります。

  • 「非営利」とは、活動によって得た利益や資産を構成員(会員や役員)に分配しないということです。

対価を受け取って活動してはならないということではなく、活動によって利益が出た場合でも、株式会社の配当のような行為はせず、その団体が目的とする活動にあてるということです。
労働の対価として役員報酬や給与を受け取ることは、利益の分配にはあたりません。

  • 「組織」とは、「社会に対して責任ある体制で継続的に存在する人の集まり」ということです。

利益を得て配当することを目的とする組織である企業に対し、NPOは社会的な使命(ミッション)を達成することを目的とする組織であるといえます。

NPOは、非営利活動を目的とする組織であり、NPO法、正式には「特定非営利活動促進法」と言いますが、その法律に基づいて法人格を取得したNPOが「特定非営利活動法人」、すなわち「NPO法人」と呼ばれています。

3. 公益法人制度の改革

2006年5月に成立した公益法人制度改革関連3法によって内容が確定し、2008年12月1日から施行されました。

旧公益法人制度では

  1. 主務官庁制のため法人の新規設立が難しい
  2. 「公 益性」の判断基準が不明確である
  3. 営利類似のものなど公益とは言い難い法 人が混在している

などの問題点が指摘されていました。

とくに小規模な任意団体にとって、官庁の縦割り認可制による法人設立は、非常にハードルの高い手続きであったことも問題点の一つとなっていました。

新しい公益法人制度により、ハードルの高かった社団法人や財団法人の設立が、一般社団法人や一般財団法人の設立においては手続きが簡素化され、法人格をが取得しやすくなりました。

任意団体の法人化の問題については、NPO法とあわせて公益法人制度の改革によってほぼ解決されたものになっています。

 

4. 法人格取得のメリットとは?

スポーツクラブを運営するために、法人格を取得するルールなどがあるわけではありません。

ではなぜわざわざ法人格を取得する必要性があるのかというと、最大のメリットは「権利・義務の主体」になれるということにあります。

「権利・義務の主体」となれる者は、 法的に「権利能力を有する者」をいい、「人(人間)」と「法人」のみとなっています。

「権利能力」
  • 法律上の権利・義務の主体となることができる資格のこと。
  • 人間(自然人)は生まれながらにして、このような権利能力を有するとされている(民法3条第1項)。
  • 出生前の胎児については、原則として権利能力を有しないこととされているが(民法3条1項)、相続・遺贈・損害賠償については、出生前の胎児であっても権利能力を持つ。(民法886条)
  • 「法人」が成立した場合には、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内で権利能力を獲得します(民法34条)。

全ての人(人間)は、権利・義務の主体となることができますので、全ての人(人間)は、権利を取得し、義務を負担することができます。

「法人」も、権利・義務の主体となることができ、法人は人(人間)以外のもので、法律によって権利義務の主体となることを認められたものをいいます。

権利義務の主体になれるということは、次のような行為を行うことができることになります。

  • 契約の締結・・・・売買契約や賃貸契約などの当事者となることができる。
  • 財産の所有・・・・不動産や動産などの所有者となることができる。
  • 裁判行為・・・・・裁判の原告・被告となることできる。

つまり、任意団体は、人・法人のいずれでもないため、権利・義務の主体となることはできません。

任意団体と取引をする相手方からすれば、法律上の権利も義務もない相手との取引を行うことになります。

契約をする相手方からしてみれば、不安もあるでしょう。

権利・義務の主体になれない 権利義務の主体になれる
社会的信頼を得られにくい

責任の所在が明確でない

社会的信頼を得られる

責任の所在が明確=個人と法人の責任の切り離し

事業の発展を阻害する 事業の発展に寄与する

スポーツ振興基本計画

(総合型地域スポーツクラブ)
創設後の総合型地域スポーツクラブにおいては、円滑かつ継続的に事業を展開するため、次のような取組が望まれる。

 NPO法人等の法人格を取得すること。法人格を取得することで総合型地域スポーツクラブは、組織として権利義務の主体となることが可能となる。また、事業内容や会計の透明化により地域の行政関係者の信頼を得ることから、行政との連携の円滑化にも資すると考えられる。さらに、事業内容や会計の透明化は、会費を納める地域住民の一層の信頼を得られることにもつながり、クラブの継続性にも寄与すると考えられる。
 傷害保険への総合型地域スポーツクラブとしての加入や危機管理マニュアルの整備等、活動中に生じる可能性のある事故に備えること。
 学校やプロスポーツ組織等と連携して地域スポーツの環境づくりや競技力の向上に取り組むとともに、女性、高齢者、障害者等がスポーツに参加しやすい環境づくり等に取り組むこと。
 総合型地域スポーツクラブへの加入層を広げてスポーツ実施率を高めていくために、スポーツ活動にとどまらず、地域住民のニーズに応じて、健康教室の開催や、レクリエーション・文化・福祉活動等も加えたクラブに発展させていくこと。
 会員のニーズや地域の実情に応じて、カフェテリア、託児室、体力・スポーツ相談等のためのトレーナー室等をクラブハウスに設けたり、民間スポーツ施設も活動の場に活用したりするなど、多様なサービスを提供するよう努めること。

5.組合と権利能力なき社団

法人格がない任意団体については、営利・非営利の区分のほかに、構成員の特性によって、「組合」と「権利能力なき社団」に分けることができます。

では、組合員の特性による区分とはどのようなものでしょうか?

判例においては、権利能力なき社団は次のとおりとしています。

権利能力なき社団の要件
  1. 団体としての組織を備えているか
  2. 多数決の原則が行われているか
  3. 構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するか
  4. その組織についての代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているかどうか

厳密に言うと、あらゆる任意団体が組合と権利能力なき社団に峻別されるわけではありませんが、上記4つの要件に該当する団体が権利能力なき社団、それ以外は組合ということになります。

権利能力なき社団 団体性が強く、構成員の個性が薄弱。人数が多く、団体自体は構成員から独立した単一体をなしている。
組合 団体性が弱く、構成員の個性が濃厚。人数が比較的少なく、団体自体は構成員から独立していない。

6.任意団体の権利・義務の所在

本来、任意団体は法人でないため、権利義務の主体にはなれません。

ですが、活動を行う上で、契約を締結したり、債務を負うことや資産を保有したい場合もあるかと思います。

このような場合、任意団体の代表者や構成員はどのような責任が生じることになるのかを見ていきたいと思います。

7.任意団体の財産・債務

権利能力なき社団 組合
団体の財産 総有(全員で所有。つまり団体のもの。個人個人に持分なし) 合有(組合員は、1人1人が財産の持分を有するが、その持分を処分することは出来ず、分割請求することも出来ない)
団体の債務(借金・損害賠償・労災補償など) 構成員は団体の財産を限度とした有限責任を負う。 構成員は団体の債務に対して無限責任を負う。

財産

権利能力なき社団の財産は、構成員全員に総有的に帰属し、潜在的持分は観念できず、財産の使用・収益のみ認められることになります。
つまり、財産についての潜在的持分の有無において違いが生じることになります。
※総有・・・団体的拘束が強く、個々の持分という概念がない。集団でひとつのものを所有しており、個々の構成員には持分はない。

組合については、団体の財産は、構成員全員に合有的に帰属し、各構成員が自由に財産を処分することは認められないことになりますが、潜在的持分を有することになり、団体の脱退により持分が払い戻されます。
※合有・・・共有者の間である程度の団体的拘束が存在している。自由に分割や処分は出来ない。

権利能力なき社団 組合
団体の財産 総有(全員で所有。つまり団体のもの。個人個人に持分なし) 合有(組合員は、1人1人が財産の持分を有するが、その持分を処分することは出来ず、分割請求することも出来ない)

債務

任意団体が借金・損害賠償・労災補償などのなんらかの債務を負った場合はどうなるのでしょうか?

債務についても、財産と同様に、組合においては構成員全員に合有的に帰属し、権利能力なき社団については総有的に帰属します。

組合のように構成員個人の個性が濃厚であるという状態は、具体的に言うと、各構成員は無限責任を負うことになり、債権者の個人財産への差押えが可能となります。

一方、権利能力なき社団の構成員は有限責任を負うに留まり、債権者は団体財産のみ差押えが可能ということになります。

つまり、構成員が有限責任か、無限責任かの違いがあります。

権利能力なき社団 組合
団体の債務(借金・損害賠償・労災補償など) 構成員は団体の財産を限度とした有限責任を負う。 構成員は団体の債務に対して無限責任を負う。

8.任意団体の代表者責任

法人 法人が権利義務の主体となるため、法人の債務につき、代表者が個人として責任を負うことはありません。
権利能力なき社団 代表者個人として債務を負うことはりません。
組合 組合員全員で業務を執行することが原則となります。

業務執行者を定めた場合であっても、あくまでも構成員としての責任は問われますが、代表者個人としての責任を負うことはありません。

  • 法人 代表者個人が負うことはない
  • 組合 代表者個人に業務執行させることは可能ですが、組合員としての責任を負うことになります。
  • 権利能力なき社団 代表者個人が負うことはない

9.不動産の登記、裁判

権利能力なき社団 組合
不動産登記 信託により代表者の個人名で登記 基本的に構成員全員の共有名義で登記
裁判 民事訴訟法だ29条により、「権利能力なき社団」としての要件を備えることで、裁判の当事者となることできます。 原則として、組合員全員が訴訟の当事者となる必要があるのです。

法人の場合は、権利義務の主体となれるため、不動産の所有者などになることができます。

組合は、不動産の登記を組合名義で行うことができないため、組合員全員の共有名義で登記します。

権利能力なき社団については、代表者個人で登記を行うか構成員全員で登記するのかどちらかを選択することになります。

10. 任意団体の損害賠償

これまで見てきたように「権利能力なき社団」として認められた場合、どちらかというと任意団体と構成員が別であるというような法人格に準ずるような位置づけがなされることが多いのかなとお気づきかと思います。

もう一度、権利能力なき社団の定義を見ておくと、次の要件を満たしていいれば、権利能力なき社団として、認められるということになります。

権利能力なき社団の要件
  1. 団体としての組織を備えているか
  2. 多数決の原則が行われているか
  3. 構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するか
  4. その組織についての代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているかどうか

権利能力なき社団として認められれば、任意団体が裁判の当事者となることができ、構成員個人に賠償責任が発生することもなくなるということになります。

権利能力なき社団として判断された 任意団体の総財産のみが責任を負う。
組合として判断された 任意団体の総財産のみならず構成員の個人の財産で賠償する可能性もある。

ですが、これまでの判例などによれば、「権利能力なき社団」であるか「組合」であるかの判断は、個別の案件ごとに裁判所の判断に委ねられることになります。

任意団体に何かトラブルが起きた際に、自分たちが主張するものではなく、裁判所が判断することになるということが非常に怖いところです。

法人格の取得は、団体と構成員個人の責任を切り離すリスクヘッジとなります。

11.様々な法人格

私法人(営利法人)、私法人(非営利法人)、公法人

営利法人、非営利法人は、先ほども触れましたが、構成員への利益の分配ができるかどうかでわかれます。

ここで各法人格は、どういった目的で活動を行うかで設立できる法人が異なってきます。

営利法人 私益 自分の利益
非営利法人 共益 構成員の利益
公益 不特定多数の利益

営利法人は、私益のために活動を行い、非営利法人は、さらにその目的として、「公益」であるか「共益」であるかによって区分されることになります。

法人格の取得に向けて、営利法人か非営利法人か、非営利法人であれば、公益か共益かを選択する必要があります。

12.法人格選択のポイント

法人化の一番の目的が「権利義務の主体となること」であれば、どの法人格を選択しても一緒なのでしょうか?

法人格を選択する際に、何を基準に選べばよいのでしょうか?

株式会社

まず、営利法人として一番に挙げるとすれば、「株式会社」ということになります。よく聞く法人格ですし、なじみ深いのではないでしょうか。

株式会社は、「私益」のために活動を行います。

NPO法人

不特定多数の者の利益のために、法に定められている特定非営利活動というものの範囲内で、活動を行う必要があります。

NPO法人は、「公益」のために活動を行います。

不特定多数の利益のために活動を行うため、「共益」を目的とすることはできません。

社団法人と財団法人

社団法人と財団法人の違いは、社団法人は、人の集まりであり、財団法人は財産の集まりであるということです。

それを証明するのが、2つの団体の要件です。

社団法人は、社員が0になったら解散となります。

ここでいう「社員」というのは、社員総会を構成する社員となります。

そしてその社員の中から役員である理事長、理事、監事などを選出します。

財団法人は、社員というものは存在せず、正味財産は最低額300万円と設定して、この最低額を下回れば解散となります。

一般社団(財団)法人

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(以下、一般法)に基づいて設立された法人のことです。

一般法人は登記のみでの設立が可能なため、容易に設立できます。

「公益」的な事業はもちろん、「共益」的なものや「収益」事業のみを行うことも何ら妨げられません。

共益的な事業とは、町内会や同窓会、サークルのように構成員に共通する利益を図ることを目的とするものです。

公益社団(財団)法人

「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下、認定法)に基づいて設置される法人です。

公益法人は2階建ての制度といわれており、1階が一般法人、2階が公益法人を指します。

一般法人を前提としているため、公益法人をいきなり設立することはできません。

公益法人となるためには、一般法人の設立後に公益認定の申請を行い、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)の認定を受ける必要があります。

公益法人は、公益性の高い法人として税制上の優遇措置を受けられますが、将来にわたって公益認定の基準を満たす必要があります。

公益認定の基準を満たせなくなると認定を取り消されるリスクもあるので、留意が必要です。

13.NPO法人と一般社団法人の違いとは?①

法人の種類 NPO法人 一般社団法人
設立にかかる期間 4〜6ヶ月 2〜3週間
書類作成の煩雑さ
設立に必要な構成員数 10人以上 2人以上
設立に必要な役員数 理事3名以上
監事1名以上
理事1名のみでも設立可
役員の親族規定 あり なし
設立に必要な財産額 0円で設立可 0円で設立可
設立に必要な費用 ほぼ0円 定款認証手数料50,000円+謄本手数料数千円 登記時の印紙代60,000円 合計 112,000円
活動内容の制限 公益の増進に寄与する活動のみ(20の活動分野) 特に制限なし
所轄庁への報告義務 あり なし

14.NPO法人と一般社団法人の違いとは?②

社員資格

社員とは、社員総会の構成員で等しく一票の議決権をもつものとなります。

その社員資格の得喪については、NPO法人と一般社団法人とでは、大きな違いがあります。

法人の種別 NPO法人 一般社団法人
員数 10名以上 2名以上
資格制限 資格制限なし 資格制限あり

必要な員数も異なりますが、もっとも大きな違いは、資格制限についてとなります。

NPO法人は、広く公益のために活動を行うため、社員の資格に合理的な理由がない限り、条件を設けることができません。

また、正当な理由なく社員の入会の申し込みに対して、拒否することができません。

一方で一般社団法人においては、活動内容に制限はないため、定款で定めることで、社員になるための資格要件を設けることができるようになります。

設立手続き

NPO法人 一般社団法人
手続きの流れ
  1. 認証申請
  2. 縦覧期間 ※認証申請後に2か月間の縦覧期間があります。
  3. 認証書の発行
  4. 登記申請
  5. 設立
  1. 定款認証
  2. 登記申請
  3. 設立
必要な期間 4か月程度 1~2週間程度

15.非営利法人の優遇と法人税

NPO法人 一般社団法人 非営利型一般社団法人
  • 設立時の優遇措置として、収入印紙等の必要がない。
  • 役員の変更や登記事項の変更の際も必要ない
  • 定款認証5万円+謄本手数料数千円 収入印紙6万円
  • 収益事業34分野にのみ課税される。
  • 全ての事業について課税される。
  • 収益事業34分野にのみ課税される。

法人税法施行令第5条規定の収益事業34業種

収益事業とは、政令に定める「34の事業」で、「継続して」「事業場を設けて」行われるものをいいます。

また、これらの事業を行うための付随行為も「収益事業」に含まれます。

一般社団法人
  • 定款認証5万円+謄本手数料数千円 収入印紙6万円
  • 全ての事業について課税される。
  • 非営利型一般社団法人として設立した場合は、収益事業34分野にのみ課税される。

34業種

①物品販売業、②不動産販売業、③金銭貸付業、④物品貸付業、⑤不動産貸付業、⑥製造業、⑦通信業、⑧運送業、⑨倉庫業、⑩請負業

⑪印刷業、⑫出版業、⑬写真業、⑭席貸業、⑮旅館業、⑯料理店業その他の飲食店業、⑰周旋業、⑱代理業、⑲仲立業、⑳問屋業、㉑鉱業

㉒土石採取業、㉓浴場業、㉔理容業、㉕美容業、㉖興行業、㉗遊技所業、㉘遊覧所業、㉙医療保健業、㉚技芸教授業、㉛駐車場業

㉜信用保証業、㉝無体財産権の提供等業、および㉞労働者派遣業

16.スポーツ教室の法人税の取り扱いについて

㉚「技芸教授業」とは?

技芸教授業とは、①技芸の教授、②公開模試学力試験、③大学入試のための学力の教授の3つです。

技芸に関する「免許付与」も含まれます。

このうち①「技芸」は、法人税上、以下の22項目が定められています(法人税施行例第5条30項)。

洋裁、和裁、着物着付け、編物、手芸、料理、理容、美容、茶道、生花、演劇、演芸、舞踊、舞踏、音楽、絵画、書道、写真、工芸、デザイン、自動車操縦、小型船舶操縦

上記項目は「限定列挙」となります。

法人税法上、野球教室やサッカー教室、剣道教室、水泳教室などのスポーツ指導事業は、技芸教授業として列挙されていませんので、収益事業に該当しません。

収益事業に該当しないため、申告は不要となります。(他のスポーツ教室でも同様です。)

ただし、消費税は課税対象となりますし、ユニフォームなどの物販は収益事業に該当しますし、合宿などの特定のイベントについては、収益事業に該当する場合もあります。

くわしくは、税務署や非営利法人専門の税理士さんにご相談いただければと思います。

入金内容 収益事業に
該当するか?
理由
入会金・会費・賛助会費・利用会員の会費収入 × 34業種に該当しない。
行政からの受託事業 34業種(請負業)に該当
イベントなどの物販 34業種(物品販売業)に該当
出版物の刊行 34業種(出版業)に該当
出版物刊行に関係する講師料収入 収益事業を営むために行う付随行為

17. NPO法人の設立にあたって

NPOとは、Non-Profit Organizationの略称です。

さまざまな社会貢献活動を行い、構成員に対して収益の分配を目的としない団体の総称であり、「特定非営利活動法人(NPO法人)」は、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得した法人になります。

NPO法人を設立するためには、都道府県または政令指定都市の所轄庁に申請をして設立の「認証」を受けることが必要です。

NPO法人は20種類の分野に該当する活動が対象です。

別表(法特定非営利活動法人法第2条関係)

  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  7. 環境の保全を図る活動
  8. 災害救援活動
  9. 地域安全活動
  10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  11. 国際協力の活動
  12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  13. 子どもの健全育成を図る活動
  14. 情報化社会の発展を図る活動
  15. 科学技術の振興を図る活動
  16. 経済活動の活性化を図る活動
  17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  18. 消費者の保護を図る活動
  19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

NPO法人を設立するための要件

NPO法人を設立するためには、所轄庁の認証を経て、法務局でNPO法人としての登記を行う必要があります。

この登記が完了しなければ、「NPO法人」として成立しませんし、もちろん名乗ることもできません。

また、特定非営利活動促進法では、NPO法人が備える要件を定めています。

(1)次の活動分野のいずれか(複数可)を主たる目的とし、それらの目的を達成するために、具体的な事業を行っていること。
(2)不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的としていること。
(3)営利を目的としていないこと。
(4)宗教活動や政治活動を主たる目的とするものでないこと。
(5)暴力団、又は暴力団やその構成員若しくは暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にある団体でないこと。
(6)常時10人以上の社員がいること。
(7)社員の資格を得たり、脱退することに不当な条件をつけないこと。
(8)社員総会を年1回以上開催すること。
(9)3人以上の理事、1人以上の監事をおくこと。

18.NPO法人設立時の役員の条件

役員として理事3人以上、監事1人以上置くこと

理事は社員、職員との兼務ができますが、監事は社員のみ兼務できます。

役員が欠格事由に該当しないこと

1.成年被後見人又は被保佐人
2.破産者で復権を得ない者
3.禁固以上の刑に処せられ、その執行の終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
4.特定非営利活動促進法若しくは暴力団による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、又は刑法第204条(傷害罪)、第206条(現場助勢罪)、第208条(暴行罪)、第208条の3(凶器準備集合及び結集罪))、第222条(脅迫罪)若しくは第247条(背任罪)の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
5.暴力団の構成員(暴力団の構成団体の構成員を含む)若しくは暴力団の構成員でなくなった

役員の親族要件

各役員について、その配偶者若しく三親等以内の親族が2人以上でないこと、また、当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員総数の1/3を越えて含まれていないことが必要となります。

つまり、役員の総数が5人以下の場合には、配偶者や三親等以内の親族が1人も役員に含むことができません。

もし、自分以外に配偶者や三親等以内の親族を役員に加えたい場合は、役員総数が6人であれば、1名含むことができます。

役員総数
配偶者や三親等以内の方が役員になれる人数
5名以下
0名
8名以下
1名
11名以下
2名
12名
3名

※役員総数には、理事だけでなく、監事の人数も含まれます。

役員の報酬を受ける者の数が、役員総数の1/3以下であること

役員の報酬とは、交通費や労働の対価として支給される通常の給与と異なり、役員としての活動に対して支給されるものをいいます。

通常の営利法人などでは特に制限はありませんが、NPO法人については、役員報酬を受けることができる役員は、役員総数の1/3以下と規定されています。

また、役員が事務員などを兼務している場合には、役員の報酬以外に、事務員としての通常の給与を受けることも可能です。

報酬の額については特に規定されていませんが、合理的な範囲を超えると剰余金・利益の分配とみなされる場合があります。

過大な役員報酬と判断されない程度の役員報酬については、問題ありません。

理事又は監事は、それぞれの定数の2/3以上いること

設立後に、欠員が生じるなどした場合で、定数の2/3未満になった場合などにも、遅滞なく補充しなければなりません。

19.NPO法人のメリットデメリット

メリット

  • 法人設立に係る必要が0円
  • 契約の締結や財産の所有などの法律行為を団体名で行うことができます。
  • 情報公開されるため、社会との接点ができます。
  • 社会的信用が高まります。
  • 業務委託などが受けやすくなります。
  • 従業員を雇用しやすくなります。

デメリット

  • 法人設立までに時間がかかる。
  • 関係官公庁への届出等が必要になります。
  • 原則として住民税が課税されます。
  • 法人税法上の収益事業を行う場合、課税されます。
  • 法人が解散した後には、財産は戻ってきません。
  • 情報公開の義務が発生します。

20.NPO法人を設立するための手順

ここでは、NPO法人設立までのおおまかな流れを紹介します。

申請書類等に不備がある場合等については、標準処理期間を超えることがあります。

21.NPO法人設立に必要な書類

申請書を作成し、添付書類を添えて所轄庁に提出します。

  1. 申請書
  2. 定款
  3. 役員名簿
  4. 役員の就任承諾及び誓約書の謄本
  5. 役員の住民票又は外国人登録原票記載事項証明書
  6. 社員のうち10人以上の者の名簿
  7. 確認書
  8. 設立趣旨書
  9. 設立総会の議事録
  10. 事業計画書(初年度及び翌年度)
  11. 活動予算書(初年度及び翌年度)

登記申請と登記完了届の提出

設立登記を完了させることにより、はじめて正式にNPO法人として成立します。

法人設立日は、設立登記申請書類の提出日となります。

設立登記が完了し、履歴事項全部証明が取得できるようになった後、所轄庁へ「登記完了届」を提出します。

22.非営利型一般社団法人にあたって

非営利型の一般社団法人として、認められるためには、以下の要件を満たした状態で設立を行う必要があります。

主な目的として、「非営利型が徹底された法人」か「共益活動を目的とする法人」で要件が異なります。

非営利が徹底された法人
  1. 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること。
  2. 解散したときは、残余財産を国や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること。
  3. 上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当 していた期間において特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)をしたことがないこと。
  4. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1 以下であること。
共益活動を目的とする法人
  1. 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること。
  2. 定款等に会費の定めがあること。
  3. 主たる事業として収益事業を行っていないこと。
  4. 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと。
  5. 解散したときに、その残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと。
  6. 上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えたことがないこと。
  7. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の 3分の1 以下であること。

役員の親族要件

各役員について、その配偶者若しく三親等以内の親族が2人以上でないこと、また、当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員総数の1/3を越えて含まれていないことが必要となります。

つまり、役員の総数が5人以下の場合には、配偶者や三親等以内の親族が1人も役員に含むことができません。

もし、自分以外に配偶者や三親等以内の親族を役員に加えたい場合は、役員総数が6人であれば、1名含むことができます。

普通法人型で設立するのであれば、社員や理事の人数は必要最低限の2名以上で設立できますが、税務上のメリットがある『非営利型一般社団法人』としたい場合、理事を3名以上置く必要があります。

これは、非営利型の要件の一つに『親族関係にある理事の数が理事全員の3分の1以下であること』という『親族制限』の要件があるからです。

『理事』と『その理事の親族等である理事』の合計数が、『理事の総数の3分の1以下』であること、つまり理事は3名以上必要ということになります。

※役員総数には、理事だけでなく、監事の人数も含まれます。

一般社団法人(普通法人) 理事1名以上
一般社団法人(非営利型) 理事3名以上

23.一般社団法人の機関設計

一般社団法人の機関とは?

一般社団法人を設立するためには、社員総会を設置し、業務執行機関として理事を少なくとも1人以上選任する必要があります。

それ以外の機関としては、定款で定めることによって、理事会、監事又は会計監査人を置くことができます。

特に理事会を設置する場合と会計監査人を設置する場合には、必ず監事を選任する必要があり、大規模一般社団法人の場合は、会計監査人を必ず置く必要がありますので注意が必要です。

※大規模一般社団法人とは貸借対照表の負債の合計額が200億円以上の一般社団法人をいいます。

一般社団法人の機関設計

以上のことから、一般社団法人の機関設計は以下のいずれかを選択する必要があります。

  1. 社員総会+理事
  2. 社員総会+理事+監事
  3. 社員総会+理事+監事+会計監査人
  4. 社員総会+理事+理事会+監事
  5. 社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

理事・監事

理事及び監事は、一般社団法人では社員の決議によって選任され、一般財団法人においては評議員会の決議により選任されるものとなっています。

一般社団法人設立のためには理事は必ず選任する必要がありますが、監事は任意での設置が可能です。

理事・監事の任期

理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会(一般財団法人の場合は、定時評議員会)の終結のときまでとされています。

定款または社員総会の決議によって、その任期を短縮することがはできますが、伸長することはできません。

監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会(一般財団法人の場合は、定時評議員会)の終結の時までとされています。

定款によって、その任期を選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会(定時評議員会)の終結の時までとすることを限度として短縮することができます.

社員

社員とは、会社の従業員という意味ではなく、社員総会での議決権を有する者のことをいいます。

一般社団法人の設立にあたっては、2人以上の社員が必要となり、社員には法人もなることができます。

また、設立後に社員が1人だけになったとしても、その一般社団法人は解散することはありませんが、社員が0人となった場合には解散することになります。

社員総会

社員総会は、法に規定する事項及び一般社団法人の組織、運営、管理その他一般社団法人に関する一切の事項について決議をすることができることとされています。

ただし、理事会を設置した一般社団法人の社員総会は、法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができることとされています。

具体的には、社員総会はその決議により、役員(理事及び監事)及び会計監査人を選任するとともに、いつでも解任することができるとされています。

さらに、定款の変更、解散などの重要な事項を社員総会で決定することとされています。

理事会

一般社団法人の理事会は、設置するかどうかは任意ですが、設置する際には、理事3名以上、監事1名以上の選任が必要です。

すべての理事で組織され、法人の業務執行の決定、理事の職務の執行の監督、代表理事の選定及び解職等を行うこととされています。

理事会の開催と決議

理事会は原則3ヶ月に1回の頻度で開催することになっています。

定款にて毎事業年度最低2回に減らすことも可能ですが、年1回の理事会開催では法律違反となりますので注意が必要です。

一般社団法人では、理事の全員が理事会を招集する権限を持ってますが、理事会開催一週間前までに、招集通知を発送する必要があります。

次に理事会の決議ですが、決議は原則として議決に加わることのできる理事の過半数が出席し、その過半数の賛成をもって行われます。

また、この定足数は定款で変更可能です。

尚、当該決議に関して特別の利害関係がある理事は議決権の行使ができません。

また、他者への委任や代理出席はできませんので、理事に就任された方で上記利害関係がない場合には必ず出席しなければなりません。

24.一般社団法人の設立手続き

①定款の作成並びに公証人の認証

設立時社員が定款を作成し、公証役場で定款の認証を行ないます。

絶対的記載事項(定款に必ず定める必要がある事項)

  1. 目的
  2. 名称
  3. 主たる事務所の所在地
  4. 設立時社員の氏名又は名称及び住所
  5. 社員の資格の得喪に関する規定
  6. 公告方法
  7. 事業年度

② 設立時理事の選任

設立時監事や設立時会計監査人を置くかどうかは任意ですが、置く場合にはそれらの者の選任も同時に行ないます。

③ 設立時理事による設立手続の調査・登記申請書類の作成

設立時監事が置かれている場合は、設立手続の調査を一緒に行い、登記に必要な書類の作成を行います。

④ 設立登記の申請

定款認証から、法定の期限内に主たる事務所の所在地を管轄する法務局に設立登記の申請を行います。

25.NPO法人と一般社団法人の会員、利用会員

NPO法人・一般社団法人ともに、正会員(=社員)が存在する一般社団法人には、セットで賛助会員や、ボランティア会員、名誉会員などを定める場合があります。

そのような場合、正会員は社員総会の議決権を持つ会員、それ以外の賛助会員などは、社員総会の議決権を持たない会員と区分されていることが多いかと思います。

正会員以外には、会員特典や会報の送付などで正会員と異なる取扱いとしている法人もあります。

また、法人が提供するサービスを利用するために会費や年会費を支払う会員は利用客となるため、法人の構成員となる会員とは混同しないようにすることが重要です。

正会員 正会員は、法律上の社員という位置づけになり、社員総会の構成員となります。

社員総会での議決権を持つことになります。

賛助会員 賛助会員とは、議決権を持たない会員を指す場合が一般的です。

法人の目的に賛同し、事業を賛助するために入会した個人や団体

利用会員 年会費や月謝を支払って、サービスの提供を受ける利用客

26. NPO法人と一般社団法人のどちらを選択するのか

NPO法人

NPO法人はNPO法にある福祉や環境など20分野の活動を通して「公益の増進に寄与する」ための組織であり、事業目的は公益です。

そのため活動についても、収益目的の事業には制約があり、運営においては市民の参加が前提です。

たとえば、「社員総会」で議決権を持つ会員に新規の申し込みがあったとします。

最高意思決定機関である総会で議決権を持つということは、運営に参加するということです。

NPO法人の場合、この申込みを正当な理由なく断ることができず、基本的には受け入れることになります。

また、ボランティアや寄附を受け入れながら運営することも多く「市民の参加のもと、開かれた運営で社会に向けた活動をする」のがNPO法人といえます。

非営利型一般社団法人

一般社団法人は事業目的が公益と共益のどちらでも設立が可能で、活動分野や内容には制限がありません。

また、市民参加型を前提としておらず、議決権を持つ人に条件や制限を付けることができ、たとえば「仲間と運営する」「地元住民だけで活動する」ことも可能です。

さらに一般社団法人には、非営利型法人として非営利徹底型と共益型の2つがあります。非営利型になるためには要件がありますが、税制上の取扱いが非営利型以外の一般社団法人に比べて若干優遇されます。

NPO法人
(特定非営利活動法人)
非営利型一般社団法人
根拠法 NPO法
(特定非営利活動促進法)
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
目的 ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与すること 非営利徹底型 共益型
事業 特定非営利活動を主たる目的とする(20分野、公益)

上記に支障がない限り「その他の事業」ができる

特に制約なし
役員 理事3名以上 監事1名以上 理事会・社員総会設置 非営利型の場合(理事3名以上)

理事会を設置する場合(理事3名以上・監事1名以上)

社員(総会で議決権を持つ人) 10人以上(設立後も常に)

資格の得喪に条件を付けることができない

2人以上

資格の得喪に一定の制限や条件を付けることができる

27.法人化によって得られる公的支援

スポーツ振興基金 スポーツ振興基金は、我が国のスポーツの国際競技力の向上とスポーツの裾野を拡大するため、1990年に政府出資金を受けて設立されました。これに、民間からの寄附金を合わせて基金の拡充を図り、その運用益等により、スポーツ団体、選手・指導者等が行う各種スポーツ活動に対して助成を行っています。
スポーツ振興助成 日本スポーツ振興センターでは、国のスポーツ振興基本計画に基づくスポーツ振興政策の一環として、我が国のスポーツの国際競技力向上、地域におけるスポーツ環境の整備充実など、スポーツの普及・振興を図るため、スポーツ振興事業助成を行っております。
  1. 地域スポーツ施設整備助成
  2. 総合型スポーツクラブ活動助成
  3. 地方公共団体スポーツ活動助成
  4. 将来性を有する競技者の発掘及び育成活動助成
  5. スポーツ団体スポーツ活動助成

スポーツ団体スポーツ活動助成

スポーツ活動推進事業 助成対象事業 助成対象者
  • スポーツ教室、スポーツ大会等の開催
  • スポーツ指導者の養成・活用
  • スポーツ情報の提供
  • 新規会員獲得事業
  • マイクロバスの設置
  1. 公益財団法人日本スポーツ協会
  2. 公益財団法人日本オリンピック委員会
  3. 公益財団法人日本レクリエーション協会
  4. 公益財団法人日本パラスポーツ協会
  5. 公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構
  6. 公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
  7. 1、2又は3の加盟団体
  8. 法人格を有する4又は日本パラリンピック委員会の加盟団体
  9. 1.~8.以外で、スポーツ振興を主たる目的とする法人

32.ひかり行政書士法人のご紹介

ひかり行政書士法人は、許認可申請手続きの代理・代行サービスを専門業務としている行政書士事務所です。

個人事務所ではなく、「行政書士法人」という法人格を持って、会社組織としてサービスを提供しています。

ひかり行政書士法人では、主に法人設立や次の許認可申請手続きなどの代行サービスを提供しています。

専門サイト

ひかり行政書士法人では、いくつかの許認可について専門サイトを運営しています。

ぜひご参考ください。

専門サイト 許認可.net ひかり行政書士法人 / 京都帰化申請サポート / 滋賀帰化申請サポート / 外国人会社設立サポート / 建設業許可申請サポート / 古物商許可申請サポート / 旅館業許可申請サポート / 宅建業免許申請サポート / 酒類販売業免許申請サポート / 一般社団法人設立ナビ / NPO法人設立サポート / 経営事項審査ナビ / 介護・障害福祉事業 指定申請サポート / 産業廃棄物処理業申請サポート / 旅行業登録ナビ / 探偵業届出ナビ /

追加質問について

  • 追加調査必要なこと
  • スポーツ振興計画
  • 総合型地域スポーツクラブ
  • クラブ活動の移行

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